朝食を終え、各自身支度が住み、SECHS(ゼックス)ハウスの近くのサイフォンの街まで来ていた。
「リグルデイダまでだね」
「ああ、よろしく頼む」
「あいよ」
オリビアは荷馬車を扱うトレントに頼み、6人をリグルデイダの街まで運んでもらうことにした。サイフォンの街は住宅街と街の中央にある市場。その市場に続くタービットの酒場兼食堂や楽器屋。小さい武器や防具、装飾品の扱いのある店もある。そういった個々の商店からなる比較的小さな街だ。海辺に面しているので、小さな港があり、そこから船で漁をしたりもしている。一方、これから向かうリグルデイダの街はこのレガント星の中でも比較的大きい街と言っていいだろう。レガント星のギルドを管轄するファナイリファビリティーの施設と窓口があり、多くの車が行きかう。店も大きく、商品も豊富に取り揃えている。なんといっても目玉はオペラハウスだ。各地からファンが集まり、劇場で演劇を楽しんでいる。街並みはバルドーのレンガで統一されている。少しの富裕層から中流階級が多くみられるが、そうでなくても、十分に暮らしていけるよう、工夫が凝らされている。リグルデイダへと馬車が進む道はすこしばかりのあぜ道だ。3頭の馬に牽かれながら進んでいく。荷馬車と言っても、今日出してもらったのは、2人並んで座れる椅子がちゃんとあって、窓も付いている。涼は小窓から見える外の景色を、それは楽しそうに見ていた。
「涼」
「は、はい!」
オリビアに呼ばれ涼は振り向いた。
「さて、どこから話そうか」
「このレガント星の歴史?それとも統べる力がいいかしら」
「そうだな」
レディアはにこにこしながらオリビアの隣に座っている。
「この6惑星は昔大きな戦争をした。デヴィーチェと呼ばれる戦だった。そこから少し時間が立って…1つの星が滅んだ」
「滅んだ…」
涼は1つの星と言うのに少し引っかかりを覚え、オリビアの言葉を復唱していた。
「それからさらに時は進み、6つの惑星はそれぞれの課題を抱えることになっていた。もともとは6つの惑星はそれぞれ星の誕生した年齢が違うんだ。このレガント星は、その中で4番目の星になる。この星の課題は、魔物の多さだ」
「魔物…」
「こないだ一緒に倒したヒュドラ、あれは例外だぜ?」
レッチェは涼の隣に座って、腕を肩の後ろで組みながら話した。オリビアは続ける。
「魔物の多さ。その為に、1つの有力者だったファナイが、ファナイリファビリティーを起こし、レガント星の各地にギルドを配属させ、魔物退治を依頼することにした。まあ、ギルドは魔物退治以外にも、色々と駆り出されるがな」
「そうなんですね」
瞳をキラキラと輝かせながら、涼は話を真剣に聞いた。
「レガント星の力は私がお話しましょうか」
「そうだな、テオル」
テオルは紅の隣に座っている。
「ボクもちゃんと聞いとかなきゃ」
「紅はそこしか興味ないのかよ」
「だってー」
紅は分かりやすい。喜怒哀楽がはっきりしていて、今でも星の歴史よりも、どれだけの力があるかの方に興味があるようだった。
「レガント星には他の星と共通する力もありますが、独自の力と言えば、法力と魔人力です。法力は傷を癒し、魔人力は人ならざる者としてあまり好まれてはいません。その力の表し方はその持ち主によって違います。ですがこれは私の意見ですが、全てが悪いというわけではないでしょう。法力はレディアが法力師なので、その力は見ることが出来るでしょう」
「使わずに済めば、それに越したことは無いんだけどね」
「はい」
「そして共通の力、というのが瑩力です。【えいりょく】とも【えいりき】とも呼ばれます。その星によって違います」
「レガント星では何と呼ぶんですか?」
「この星では【えいりょく】だ」
「なるほど…」
「この力は少々特殊でしてね。先ほどの法力と魔人力もこのレガント星の力を源として、その使う人間の血がモノを言います。ですが、瑩力は、6惑星の星々に溢れる気力とその人間の武道の力を掛け合わせたことを言います。その個人の武道の力単体で、凄い威力を発揮する者もいれば、星の力を上手くブレンドして扱う者も存在します」
「はい」
涼は、今の話がちゃんと分かったのだろうか。
「これは実際に見てみると実感が湧くだろうな」
「これから、それを見る機会もあるぜ、涼」
「うん…大丈夫かな」
「へーきさ、俺達がいるし、涼だってこれから」
「これから?」
「鍛えないとなー」
「ホント!?」
涼は立ち上がった。
「俺も強くなれるの!?」
「もう、危ないわよ、涼」
「あ、ごめんなさい」
涼はレディアにたしなめられ、大人しく座ったものの、気持ちは荒ぶっていた。
「それは涼次第だな」
オリビアの言葉に、涼はときめきっぱなしだった。そんな涼を見て、レッチェも嬉しそうだった。
「もうすぐ着くよ」
トレントの言葉通り、もうリグルデイダの街が見えてきていた。
涼はここから自分の冒険が始まりそうに感じていた。
To be continued