SECHS1長篇小説第22話『青い星の子 9 SECHS加入』。

投稿者: | 2021年1月30日

涼はファニーの後を付いていった。

ファニーが案内したのは少しばかり大きめの武器庫だった。

「どうぞ、涼くん」

「わあ」

涼は感嘆の声を上げた。

中には様々な武器が並んでいる。とても涼がいた所ではお目にかかれない代物ばかり。涼はおずおずと中へと進んだ。ファニーも後から入ってきて。

「こちらの武器。どれでもお選びください。それを使ってサナストロスを倒していただきます」

「どれでもって言われても…」

涼は武器庫内を見回した。どれも重厚そうで威圧感を覚える。それでも見てみると、1つ。目にとまる武器があり、それに手を伸ばした。平たいツボに珠の柄の日本刀によく似た武器だった。

「それでよろしいですか?」

「えっと、はい」

「ではこちらへ」

涼はファニーに促されるまま、武器庫を出る。そしてそのままファニーの後を追う。ファニーが進んだ先は、少し広めの円形状のリングのような場所だった。リングと言っても小さめの、コーナーも何もない、マットも石畳もない、円形状の白い床と同じ続きのゲージがあるだけだ。そこが2か所開く仕様になっていて、涼はそこへ行くように指示された。そしてゲージの近くにはレッチェ、オリビア、テオル、レディア、そして紅がいた。

「涼ちゃん、その武器」

「これ?」

涼はゲージの中に入りつつ、レッチェに武器を見えるようにした。

「結構いいの選んだね。頑張って」

「うん!」

それを見て、ファニーは合図した。

「では涼くん。今からレガント星で最もポピュラーな魔物、サナストロス、通称サナと戦ってもらいます。勝利条件はだた1つ勝つこと。負けは死を意味します」

「…」

「ふふ、覚悟は出来ているようですね。では!」

ファニーが合図すると同時に、もう1か所の扉が開く。奥からサーモンピンクの背中にトゲのある魔物が出て来た。体長およそ1m。くりくりっとした緑色の瞳には愛嬌さへ感じる。

「涼ちゃん!すばしっこい奴だから気を付けて!」

涼は意を決して、鞘から刀を抜いた。刀は上手くするりと抜けた。黄みと青みがかった綺麗な刃をした刀は、冷たさよりも、その場を切り抜ける強さを感じることが出来た。涼は刀を構える。3歳の頃から通っていた剣術がこんな形で役に立つとは、涼自身も思っていなかった。先に動いたのはサナだった。短い2本の脚で地面を蹴って、涼へ一直線に向かってくる。涼はすかさず避けたが、サナの以外にも鋭い爪は空を切った。サナはいったんそこでゴロンと転がり、また涼へと向かってくる。涼は今度も避けることに成功した。そうしているうちに、すばしっこいと言っても、動きが短調なのが見えてくる。次で仕留める。涼はそう思い。すっと息を吐いた。サナはまた転がり涼へと向かってくる。涼はサナが爪を繰り出す前に、斬と、袈裟斬りにした。サナは少しばかりの悲鳴を上げることもなく、パタンと倒れた。

「……」

「やったあ!」

「やるものですね」

「涼…」

歓声を上げたのは、涼以外のメンバーだったが、涼も一呼吸置いて、刃を鞘へと納めた。

「お見事です!」

ファニーだ。

「俺、合格ですか?」

「風見涼くん」

「はい」

「見事テストを突破されましたね。こちらへどうぞ」

「はい!」

涼はゲージを出て、ファニーの所へ行った。レッチェ達も側に来ていた。

「こちらを受け取ってください。ギルドの証明バッジです」

「これが…」

金色の6つの星の形をしたバッジを涼は受け取る。それを受け取った瞬間に、バッジは光を放ち、涼の身体へと吸い込まれていった。

「!一体何が…」

「これはレガント星のギルド、ファナイリファビリティーの機関の者である証明になります。身体に吸い込まれたのは、その人それぞれの力によるものです。念じれば、またバッジに戻すことが出来ます」

涼は試しに、バッジが出現するように念じてみた。すると不思議なことに、ファニーが言ったとおりに、また手の平へと戻って来た。

「無くさないでくださいね」

「はい!」

「そしてその武器ですが…」

「これは」

ファニーは説明を続ける。

「見習い戦士より少し上級者が扱える、アントワンドソードです。涼くんなら、侍といったところかしら。ギルド入会の記念に、さしあげますわ」

「あ、ありがとうございます」

涼は初めて手にした真剣の重さが、今になって実感してきた。

「それでは、風見涼くん。ギルドSECHS(ゼックス)の一員として、より良い働きを期待しております」

「はい!」

そう言ってファニーはその場を後にした。

「涼ちゃん!」

レッチェはすかさず涼に抱きついた。

「やったね!やったね!」

「レッチェ!ありがとう!」

「ふ、良かったな」

「オリビアさ…オリビア、みんなも、ありがとう!これから、よろしくお願いします!」

「決まりね!」

レディアもくるくるの栗色の髪を揺らし、嬉しそうにはしゃいだ。

「ええ」

テオルもいつも以上ににこっと笑った。

「よろしくね!涼ちゃん!これから一緒に頑張ろうね!」

紅は大きく口を開けて笑った。

「じゃあさ、何か食べて帰ろうぜ」

「いや、トレントを待たせてある。今日はこれくらいにして、家へ帰ろう」

「そっか。そうだな。じゃ行こうぜ!涼ちゃん!」

「うん!」

レッチェは心底嬉しそうに、でも少し照れたように涼の隣で笑って見せた。これから涼がギルドSECHS(ゼックス)の仲間入りとなった。

この先、涼には一体何が待ち受けているのだろうか。それは涼自身が期待するものか、それとも…。

                        第2章 青い星の子 END

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