「来たか、ティレイサ」
「お父様」
王の居る広間へとティレイサは呼ばれた。
王の傍らにはオリビアが。
ティレイサと共に、SECHSメンバーである、紅、レディア、テオル。そしてティレイサの側にレッチェが居た。
「ここに来なさい、ティレイサ」
ティレイサは王の前まで来た。
オリビアが続ける。
「先ほど富豪ディレー氏からの書簡が届いた」
「!」
「ディレー氏は姫に屋敷へ来られよと、言っている」
「……」
王はオリビアが伝えるのを待ち、ティレイサへと言葉を紡いだ。
「ティレイサ」
「はい」
ティレイサは直に返事を返す。
「私はこの城を守ることを常に考えていた。この城は民や兵士達。そしてそなたの母との大切な城だ。
この城あってこそ我らは我らでいられるのだと。しかし今財政が傾き、存続も危うい。
ディレーとの婚姻があれば、この城は守られる。そう私は考えていた」
「お父様…」
「しかし、その愚かな考えのせいで、本当に大切な姫を失ってしまうかもしれないという事に、ようやく気付いた」
「!」
「そなたの母の事を私は忘れたことは1度たりともない。そなたの母を今も愛しておる。
しかし、姫。そなたにはその愛のある婚姻を、そなたの気持ちを顧みず、そなたの大切な気持ちを潰してしまうところだった」
「……」
「そなたは、私たちお見て、恋愛をして婚姻したいと。想っているにもかかわらずな」
「…!お父様、知っていらしたのですか…」
「…私は愚かであった。ただ1人の娘を、傷つけてしまうところであった…」
「お父様…」
姫は涙ぐんだ。父は、自分を大切に思ってくれていたのかと…。
「ごめんなさい!お父様。私、お父様を信じていれなかった。
私の事を、こんなに想ってくれていたのに…!」
ティレイサは父に抱き着いた。
「姫よ」
王はティレイサを抱き留め、
「ディレーとの婚姻はもうよい。それよりも、姫の想う相手とするのだ。
今居なくても、必ず姫には姫にとっての相手が現れる。
私とアヤがそうであったように」
「お父様」
ティレイサはぎゅっと目を瞑った。
そして。
「ですが、そうであればこの城はどうするおつもりです?」
「うむ。経営手腕のものに譲ろうかと思って居る」
「!」
「私とアヤはこの城と共に過ごしてきた。それは変わりない。
しかし、私にはそなたが大事。
この城と別れることになろうとも、生きてはいける。
民も兵も、守っていけるような人物に託すつもりだ。
姫、心のままに。恋をするがよい」
「お父様…」
「それで、ディレー氏の方はどうしますか?」
テオルは尋ねた。
「うむ」
王はティレイサを離し、真摯に頷いた。
「1度は話があったことゆえ。丁重に…」
「お父様」
「うむ?」
「私、ディレー氏に会ってまいります」
「何と!」
驚いたのは王の方だった。
「お父様が、1度はお認めになった相手。私、お会いもせずにダメだと決め切ってしまっていました。
それに断るのであれば、それは私の口から…。お父様、お願いです。ディレー氏に会いにいかせてください…!」
「姫…」
王は静かに頷き、オリビアへと。
「姫の事、頼めるか?」
「お任せください」
オリビアはティレイサを見て、そしてSECHSメンバーの方へと目を向けた。
「よーし!お姫様をディレーさんのところまで送って、無事に戻ってくるのが、目的だね!」
「姫も、なかなかやるじゃない」
「さっそく支度をしましょう」
各々が用意に入った。
ティレイサはレッチェの所まで来て。
「お願い…出来るかしら?」
「あんたを護るよ」
レッチェはぶっきらぼうに答えたが、優しい瞳をしていた。
ティレイサは、その瞳の奥に輝きを見た。
(わからない方)
でも、その心とは裏腹に、傍にいてくれるだけで安堵を感じていた。