SECHS1長篇小説第7話『プリンセス・ティレイサ 7』。

投稿者: | 2021年1月5日

 「来たか、ティレイサ」

「お父様」

王の居る広間へとティレイサは呼ばれた。

王の傍らにはオリビアが。

ティレイサと共に、SECHSメンバーである、紅、レディア、テオル。そしてティレイサの側にレッチェが居た。

「ここに来なさい、ティレイサ」

ティレイサは王の前まで来た。

オリビアが続ける。

「先ほど富豪ディレー氏からの書簡が届いた」

「!」

「ディレー氏は姫に屋敷へ来られよと、言っている」

「……」

王はオリビアが伝えるのを待ち、ティレイサへと言葉を紡いだ。

「ティレイサ」

「はい」

ティレイサは直に返事を返す。

「私はこの城を守ることを常に考えていた。この城は民や兵士達。そしてそなたの母との大切な城だ。

この城あってこそ我らは我らでいられるのだと。しかし今財政が傾き、存続も危うい。

ディレーとの婚姻があれば、この城は守られる。そう私は考えていた」

「お父様…」

「しかし、その愚かな考えのせいで、本当に大切な姫を失ってしまうかもしれないという事に、ようやく気付いた」

「!」

「そなたの母の事を私は忘れたことは1度たりともない。そなたの母を今も愛しておる。

しかし、姫。そなたにはその愛のある婚姻を、そなたの気持ちを顧みず、そなたの大切な気持ちを潰してしまうところだった」

「……」

「そなたは、私たちお見て、恋愛をして婚姻したいと。想っているにもかかわらずな」

「…!お父様、知っていらしたのですか…」

「…私は愚かであった。ただ1人の娘を、傷つけてしまうところであった…」

「お父様…」

姫は涙ぐんだ。父は、自分を大切に思ってくれていたのかと…。

「ごめんなさい!お父様。私、お父様を信じていれなかった。

私の事を、こんなに想ってくれていたのに…!」

ティレイサは父に抱き着いた。

「姫よ」

王はティレイサを抱き留め、

「ディレーとの婚姻はもうよい。それよりも、姫の想う相手とするのだ。

今居なくても、必ず姫には姫にとっての相手が現れる。

私とアヤがそうであったように」

「お父様」

ティレイサはぎゅっと目を瞑った。

そして。

「ですが、そうであればこの城はどうするおつもりです?」

「うむ。経営手腕のものに譲ろうかと思って居る」

「!」

「私とアヤはこの城と共に過ごしてきた。それは変わりない。

しかし、私にはそなたが大事。

この城と別れることになろうとも、生きてはいける。

民も兵も、守っていけるような人物に託すつもりだ。

姫、心のままに。恋をするがよい」

「お父様…」

「それで、ディレー氏の方はどうしますか?」

テオルは尋ねた。

「うむ」

王はティレイサを離し、真摯に頷いた。

「1度は話があったことゆえ。丁重に…」

「お父様」

「うむ?」

「私、ディレー氏に会ってまいります」

「何と!」

驚いたのは王の方だった。

「お父様が、1度はお認めになった相手。私、お会いもせずにダメだと決め切ってしまっていました。

それに断るのであれば、それは私の口から…。お父様、お願いです。ディレー氏に会いにいかせてください…!」

「姫…」

王は静かに頷き、オリビアへと。

「姫の事、頼めるか?」

「お任せください」

オリビアはティレイサを見て、そしてSECHSメンバーの方へと目を向けた。

「よーし!お姫様をディレーさんのところまで送って、無事に戻ってくるのが、目的だね!」

「姫も、なかなかやるじゃない」

「さっそく支度をしましょう」

各々が用意に入った。

ティレイサはレッチェの所まで来て。

「お願い…出来るかしら?」

「あんたを護るよ」

レッチェはぶっきらぼうに答えたが、優しい瞳をしていた。

ティレイサは、その瞳の奥に輝きを見た。

(わからない方)

でも、その心とは裏腹に、傍にいてくれるだけで安堵を感じていた。